外国で意匠権取得を希望される場合には、各国代理人に依頼して意匠出願を行う方法があります。
しかし、複数国に意匠出願する場合には、費用が高くなり、管理も複雑になってきます。
そこで、このような場合には、「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定(以下「ジュネーブ改正協定」といいます。)」という国際条約に基づく意匠の国際出願をご利用ください。
1の国際出願をしてWIPO国際事務局における国際登録を得ることにより、意匠の保護を求めたい複数の指定国において、各指定国に意匠出願した場合と同等の効果を得ることができますので、費用削減および管理容易化を達成することができます。
1.手続
(1)国際出願
保護を受けたい意匠および指定国等を記載した願書を直接または日本国特許庁経由でWIPO国際事務局に提出します。
(2)国際登録および国際公表
WIPO国際事務局は、国際出願の方式審査をし、不備がなければ、国際出願に係る意匠を国際登録簿に国際登録します。これにより、各指定国に意匠出願したことと同一の効果が発生します。WIPO国際事務局は、国際登録した意匠を国際登録から原則6か月後に国際公表します。
(3)指定国での審査
各指定国の官庁は、審査によって拒絶の理由を発見した場合には、国際公表から6か月または12か月以内に、WIPO国際事務局に対して拒絶の通報を行います。各指定国の審査において、拒絶の理由が存在しない場合、または、拒絶の理由が解消した場合には、当該指定国の法令に基づく保護(意匠権)の付与と同一の効果が発生します。
(4)保護の更新
国際登録の存続期間は、国際登録の日から5年であり、WIPO国際事務局への国際登録の更新手続きにより、各指定国における意匠の保護が更新されます。
2.メリット
(1)一の手続で複数国に権利取得
複数の指定国および複数(最大で100)の意匠についての権利取得のために、単一の書類、単一の言語(英語、フランス語、スペイン語のいずれか)および単一の通貨(スイスフラン)による一括手続が可能となるため、指定国毎に意匠権を取得するために必要なコスト等の低減を図ることができます。
(2)複数の指定国に跨る複数の意匠についての意匠権の管理が容易
国際登録の更新等の手続は、各指定国に対してではなく、WIPO国際事務局に対する一回の手続によって可能となるため、各指定国における複数の意匠権の管理が容易になります。
3.その他
ジュネーブ改正協定を用いると、このように複数の指定国に対する意匠出願および意匠権管理の手続きが容易になるというメリットがありますが、日本国の意匠制度とは異なり、意匠出願や各指定国における拒絶理由の内容等が国際公表によって公開されてしまう点等に注意が必要です。
個別案件に対するプロフェッショナルのアドバイスは、弁理士までお気軽にお問い合わせください。