外国に特許出願するルートとしては、下記3つのルートがあります。
1. 直接出願ルート(図1)
権利化を望む国の特許庁に対して、その国の出願手続ルールに従って直接出願するルートです。
(1)メリット
権利化を望む国が確定している場合、その国において直接的かつ迅速に権利化を図ることができます。
(2)デメリット
各国の出願手続ルールに従う必要があるため、権利化を望む国が複数あり、それらの手続言語が異なる場合には、出願段階から複数の翻訳文を準備する必要があります。
例えば、アメリカおよび韓国で権利化を望む(日本国出願をしない)場合、英語の明細書翻訳文(アメリカ用)および韓国語の明細書翻訳文(韓国用)の2つを準備する必要があります。
2 パリルート(図2)
第1国の特許庁にした特許出願をベースにパリ条約による優先権を主張して、権利化を望む国(第2国)の特許庁に出願するルートです。
(1)メリット
優先権主張が有効と認められる場合、第2国出願は、第1国出願と第2国出願との間に行なわれた行為(例えば、当該発明の公表、他の出願等)により、不利な取扱いを受けません。
例えば、日本国(第1国)の特許庁にした特許出願をベースにパリ条約による優先権を主張して、アメリカ(第2国)の特許庁に出願した場合、日本国出願後、アメリカ出願前にその発明を公表しても、アメリカでの出願は、公表された自己の発明により新規性や進歩性を否定されることはありません。
(2)デメリット
直接出願ルートと同様に、出願は、各国の出願手続ルールに従う必要があります。従って、権利化を望む国が複数あり、それらの手続言語が異なる場合には、出願段階から複数の翻訳文を準備する必要があります。
3 PCTルート(図3)
特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)加盟国の受理官庁(原則として、その国の特許庁)に国際出願をし、その後、その国際出願を、権利化を望む国の特許庁へ移行するルートです(パリ条約による優先権主張も可能)。
(1)メリット
1つの国際出願により、複数国(PCT加盟国)に対して特許出願の効果を発生させることができます。また、権利化を望む国の選定期限を、パリルートの12ヶ月とは異なり、優先日から最長31ヶ月まで遅らせることができます。
(2)デメリット
移行国の数(特に少数の場合)によっては、パリルートを利用してそれらの移行国のそれぞれに出願する場合よりも、費用が多くかかる場合があります。
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